あずまきよひこ『よつばと!2』DENGEKI COMICS

1巻はとても良かったんですが、今回の2巻、ちょっと悪い方向へ行き始めちゃってるような気がします。
1巻はそれほどでもなかったんですが、女の子、とくに風香という登場人物の胸があまりにも強調されすぎです。このマンガにおいては、決してエロが前面に出てくるようなことはないけれど、あずまきよきひこという作者は明らかに、女性の体の線というものに偏執的なまでに拘っている。こういう、そこはかとないエッチさというものが、どうにも私には鼻につきます。
このマンガは、一見、日常を描いているように思えるけれど、完全なファンタジーです。波乱万丈なマンガもファンタジーですが、まったく何も起こらない、人物たちの感情が揺れ動かないマンガも、ファンタジーです。
だからこそ、読者にとってよつばの住む世界というものは、虚構が現実へと反転してゆくような感覚を味あわせてくれる、という魅力を秘めているのではないでしょうか。その虚構世界は、とても居心地が良さそうに見えます。よつばの父親も、たぶんジャンボも、気ままな自由業者だし、出てくる女の子はみんな可愛いけれど、友達感覚で付き合えそう。この世界においては、徹底的に「労働」と「恋愛」が消去されています。世知辛さのカケラもありません。そんなファンタジーが、日本のどこにでもありそうな町の風景のなかにセットされているわけですから。
しかし、そこで性欲が問題になってくる。性はマンガのリアリティにとって不可欠です。とくにこの種のオタクに強くアピールするようなマンガにとっては、なおさらそうです。ところが、『よつばと!』の世界に性を導入することは、とても困難です。あるいは、あずまきよひこのマンガ全般において言えることかもしれない。虚構を現実と錯視させることこそが、その魅力だから。「性」の前段階として「恋愛」を描けば、きつくなる。「性」を直截に押し出せば、ファンタジーであることが明白になってしまう。そういうジレンマのなかで選択されたのが、このTシャツを愛好する風香という女の子だったのではないでしょうか。
この2巻においては、そんな隠微すぎる欲望が剥き出しになっているような気がします。ちょっと読むのが辛い。もうちょっと自然な形で女の子を描いて欲しい。
とはいえ、笑えることは笑えます。2巻では、1巻に較べるとなんとも弛緩したコマ割りになっているけど、やはりそこそこマンガらしいリズムもきちんと刻んでます。「あずまんが大王」同様に、終わりへの緊張感というものが全編をしっかりと貫いているのもいいです。
そしてもう一つ。お隣の綾瀬家の「父親」というものを、どう処理するのかということを、どうやらあずまきよひこも考えている様です。
あずまきよひこの前作『あずまんが大王』の、余りにもあっけない終わり方というものに、私は倫理的な好感を抱いています。なんとか頑張って欲しい。