幸村誠『プラネテス 4巻』モーニングKC

最終巻がついに出ました。思えばコンビニの夜勤中にゴミ捨て場から拾ってきた「モーニング」でたまたまこのマンガが載ってるのに出くわしたのが、丁度一年前くらい。そのまま帰り際に早い時間から営業している本屋で速攻1巻と2巻を一気買いしたというのが僕とこのマンガの付き合いの始まり(そんなに長くないな・・・)でした。
そのぼけっと煙草を吸いながら店の奥で初めて読んだプラネテスが、まさにここに収録されている「phase18 グスコーブドリのように」。ぼんやりとした頭ながら、とにかく「この人、マンガ上手い!」と思ったことだけはすごく覚えている。なにしろこっちは全く展開を知らないまま読んでいるのだからなんだこのマンガ?と普通なりそうなものだけど、冒頭の1ページで宮澤賢治の「春と修羅」が淡々と綴られ、そして次の開きページで墓地に佇む女性と雲間から指す微かな光が捉えられると、それだけで引き込まれてしまったような気がします。内容についても、そもそも墓地での男と女が会話をするだけなのにここまでスリリングに展開しながら、しかも両者の全てが分かるように構成されていて、もうひたすら唸るばかりだったと思います。
だから最初は、ああこれは短編連作なのだなと予想したのだけれど、それは当たったといえば当たっているし、当たってないといえば当たってない気もします。ただ、どちらかと言うと最初の出会いがそうであった以上、この作者さんは1話単位できっちり仕上げてきた回の方が、やはり良い。この人の構成の上手さというのは、短編にありがちな決して分かり難いものではなく、ちゃんと注意して読めば何もかもがきっちり読解できるという点にあります。つまり作者さんはかなり意識的に構成しているわけで、それが1話くらいの短さでやって貰えると丁度自分的に好きなタイトさみたいなのが出てくるのです。
そういう意味ではこの4巻が僕は一番好きです。フィー姐さんの連作も含め、おおよそ1話1話がきっちり完成されて緩やかな繋がっています。こんな贅沢な感覚はなかなか味わえるもんじゃありません。2巻あたりで辛くなって、という人も居るようですが、4巻を楽しむためにも頑張って読んで欲しい。4巻を楽しむためにもしっかりと読んで欲しい。そんな風に思っとります。
(内容レベルも文句なしのラストでした。もう最後のハチマキの言葉なんて分かってるのに分かってるのに泣きました。もうオッサンですから・・・あとフィー姐さんの「馬鹿可愛さ」はどうしてくれよう!でもこーゆー大人って日本に居なさそうだ・・・)