『ミニモニ。でブレーメンの音楽隊 第5話』

辻ちゃんは天性の女優であると改めて確信しました。あの存在感はただごとではない。演技に関していえば前回までの高橋愛が上手く器用にまとめている一方、辻ちゃんは見ていて時々「あれれ?」と脱臼させられるような感じがある。いや、正直にいえば、辻ちゃんの演技は下手な部分が一杯ある。今回だと、こんちゃんのお店の前でのいわゆる防衛反応的逃避を見て、辻ちゃんがキレる部分とか、明らかに怖すぎてやり過ぎ。でも、いきなり怖くなるという構成無視は問題だけれど、そこで「怖い!」と思わせてくれるのが、辻ちゃんのすごいところ。目元に力がある。もっといえば、目で場の空気を一変させてしまう。それ以外の部分ではミスが多いけれど、このことだけでもう十分すぎるほど女優合格です。はっきりいって、女優に必要なのは単なる演技力じゃなくて、視線に備わってくる存在感なのだ。その点で、高橋さんはちょっと物足りなかった。たとえば、ミカが歌う「傘がない」に耳を傾ける辻ちゃんの表情。何も台詞はないし、ただ辻ちゃんの眼差しを映すだけなのに、これだけで1シーンの間が持つ、どころかそこに緊張感がみなぎってしまう。視線だけで、観てる人間をサスペンドしてしまう。こんな演出を可能にしてくれる演技者なんて、そうザラにはいないです。たぶん、辻ちゃんは視線劇に向いている。アニメや漫画が描くような単純な感情ではなくて、不安や痛み、暴力や狂気のような底知れない情念のようなものを表現させればかなりいい線を行くと思う。そういうのって自分と状況が截然と区別できない磁場のようなものとの一体感だから、これは難しいはずだけど、それを辻ちゃんは容易にやってくれると思う。TVドラマじゃなくて、映画に向いている女優ってことかもしれない。来週も楽しみです。