桜場コハル『今日の5の2』ヤンマガKC

「一部でウワサのライトエッチな小学生マンガ」という惹句で引いてしまった人、ちょっともったいないですよ。たしかに、一つの話はわずか10ページ、そのなかに必ず一つはライトエッチな場面が描かれます。にもかかわらず、エッチなマンガなのかと問われれば、否です。これはひとえに主人公・リョータ君の普通さのおかげです。ありがちなエロガキでもないし、生真面目少年でもない。このどこにでもいそうな5年生の男の子が、ひたすら偶然によって女の子たちのエッチな瞬間に出くわしてしまう。ドギマギして、見当違いにも女子に「エッチ〜」呼ばわりなんかもされて、「勘弁して下さい」ってな嘆息を漏らす。どうですか、なにか思い出しませんか。この女の子たちへの微妙な距離感が、小学生男子のものとして、圧倒的にリアルなんです。もちろん、シチュエーション自体は全くあり得ないんですが(保健室で女子集団がバストサイズのはかりっこをしているところに遭遇、とか!!)、不思議と作者のあざとさを微塵も感じさせません。すなわち、エッチは目的にあらず。小学校のあの甘酸っぱい教室に戻りたい、そんなノスタルジーを掻き立ててくれる誘引剤にすぎないのです。行きつ戻りつの日常を淡々と短編でつづってくれますが、サラッと恋愛関係が進展しちゃうところも、これまたリアル。なかなかあなどれない、小学生青春マンガだと思います。

で、それはさておきw なんでこのマンガ、途中で絵柄を変えちゃったんでしょうか。具体的には「8時間目」から、いわゆるアニメ絵というか、ふにゃっとした絵というか、キャラクターのデフォルメ度が微妙に上がった絵になってしまいます。そこまでは、ちょっと線が堅くて、馬鹿丁寧に陰影も書き込まれていて、ページにザラッとした感触があります。たしかに読みやすさは上がってます。ただ、個人的には、エッチ度が急降下。小学生の貧相な体が生々しく表現されていて、萌えでもなく、いや、エッチでもなく、むしろエロすら感じさせてくれてたのに。もったいない・・・