スコット・フィッツジェラルドの文章

昨夜の「映像の世紀」の再放送で読まれた文章。2ちゃんねるガイドライン板のスレで発見したので、なんとなく貼って置きます。アメリカの20年代、大衆消費社会が到来しつつある時代の空気をとてもよく伝えている文章だと思ったので。

時代の流れは確実に変わりつつあった。
明るさ・華やかさ・生命力。
そんなさまざまな要素が混じり合いながらそこかしこに溢れ出し
一つの空気を作り上げはじめていた。
この時代ではっきり覚えていることがある。
私はタクシーに乗っていた。
車はちょうど藤色と薔薇色に染まった夕空の下、
ビルの谷間を滑るように進んでいる。
私は言葉にならぬ声で叫び始めていた。
そうだ、私にはわかっていたのだ。
自分は望むものすべてを手に入れてしまった人間であり、
もうこの先、これ以上幸せにはなれっこないのだということを。
スコット・フィッツジェラルド
マイ・ロスト・シティーより

もう一つ。そんな時代のなかでのリンドバーグの偉業についての文章。これもすごい切ないです。

なにか光り輝く異様なものが空をよぎった。
同世代の人々とは何も共通点を持たないかに見えた
ひとりのミネソタ出身の若者が、英雄的行為を成し遂げた。
しばらくのあいだ人々は、カントリー・クラブやもぐり酒場で
グラスを下に置き、最良の夢に思いを馳せた。
  「そうか、空を飛べば抜け出せたのか――」
われわれの定まるところを知らない血は、
果てしない大空になら、フロンティアを見つけられたかもしれなかったのだ。
しかし、われわれはもう引き返せなくなっていた。
ジャズ・エイジは続いていた。
われわれはまた、グラスを上げるのだった。
スコット・フィッツジェラルド
ジャズ・エイジのこだま より